
菓子の風味を引き出すローストの技術
焼き加減は、洋菓子において、くるみ、榛の実、扁桃裁断などの種子類を用いる際によく用いられる手法です。この工程を行うことで、種子類が持つ素材本来の香味が著しく向上し、歯触りにも心地よい変化が生まれます。焼き加減を行った種子類は、出来上がった菓子の飾りとして表面を彩ったり、生地に混ぜ込んだりすることで、見た目の美しさを高めるだけでなく、香味と歯触りの両面からお菓子全体の味わいを豊かにする役割を果たします。和菓子においても、例えば最中の皮を軽く焙じることで香ばしさを増したり、黄粉を炒って香りを際立たせたりする例があり、焼き加減に通じる技術が用いられています。ただし、和菓子においては、素材そのものの持ち味を重んじる傾向があるため、焼き加減による香味の変化は、洋菓子ほど大きくはありません。焼き加減の程度は、菓子の種類や求める香味によって調整されます。軽く煎ることで素材本来の繊細な香味を残し、深く煎ることで香ばしさを強調するなど、細やかな調整が可能です。また、焼き加減後の種子類は、粗く刻んで歯触りの変化としたり、粉末状にして生地に混ぜ込み、香味を均一に広げたりするなど、様々な方法で菓子に取り入れられます。焼き加減は、菓子の香味を最大限に引き出すための、重要な工程と言えるでしょう。