
みずみずしさの極み、生菓子の世界
和菓子の世界では、水分量と製法によって大きく三つの種類に分けられます。その中でも特にみずみずしいのが「生菓子」です。これは、製造された直後の水分量が30%以上のものを指します。この高い水分量が生菓子独特のしっとりとした食感と、素材本来の風味を最大限に引き出す秘訣です。一方、水分含有量が4.5%以下のものは「干菓子」、その中間のものは「半生菓子」と呼ばれます。生菓子は、蒸し菓子、焼き菓子、餅など多岐にわたります。例えば、上品な甘さと口当たりの良さが特徴の薯蕷饅頭は蒸し菓子の代表格です。また、香ばしい風味と餡の甘みが絶妙な栗饅頭やどら焼きも、焼き菓子の生菓子に分類されます。お祝い事に欠かせない鏡餅や赤飯も、水分が多いため生菓子として扱われます。生菓子は鮮度が重要で、日持ちはしませんが、素材の風味や香りを存分に楽しめます。和菓子店では、職人たちが日々丹精込めて生菓子を作り続けています。また、季節の移り変わりを表現した美しい意匠も、生菓子の魅力の一つです。職人たちは旬の素材を使用し、繊細な技術で自然の美しさを表現します。生菓子は、目で見て楽しみ、舌で味わう、五感で楽しめる芸術作品と言えるでしょう。