イタリア

パンドーロは、「黄金のパン」を意味する伊太利亜の伝統的な焼菓子です。聖夜の時期には、パネトーネと並び、多くの人々に親しまれています。パネトーネとの大きな違いは、干し果物を使わない点です。生地は、伊太利亜特有の自然酵母であるパネトーネ種を使い、時間をかけて発酵させます。この発酵の過程が、独特の風味ときめ細かく、しっとりとした食感を生み出す重要な要素です。さらに、バターと鶏卵を惜しみなく使うことで、濃厚で贅沢な風味に仕上がります。パンという名を持ちますが、口に含むと上質な絹織物のように繊細で、忘れられない美味しさです。形状は特徴的な星形で、聖樹の飾りように美しく、食卓を華やかに彩ります。大きさは様々ですが、家族や親しい人と分け合って楽しむのに適しています。黄金色の見た目と豊かな風味は、聖夜の特別な時間を、より一層思い出深いものにしてくれるでしょう。

パネトーネは、伊太利亜のミラノを発祥の地とする伝統的な酵母菓子です。その歴史は中世に遡るとされ、複数の起源に関する物語が語り継がれています。ある伝説では、晩餐会で菓子職人の見習いが誤ってパンを焦がしてしまい、窮余の策として干し果実や砂糖漬けを加えて焼き上げたのが始まりとされています。また、身分を隠した貴族の若者がパン職人の娘と恋に落ち、彼女のために特別なパンを作ったという逸話も残っています。いずれにせよ、パネトーネは長年にわたりミラノの人々に愛され、聖夜の食卓に不可欠な存在となりました。その製法は秘伝とされ、各家庭や菓子店で独自の製法が守られてきたのです。19世紀に入ると、パネトーネは伊太利亜全土、そして世界へと広がり始めました。産業革命以降、酵母技術や運搬技術が発展したことで大量生産が可能になり、より多くの人々がその味を享受できるようになりました。しかし、大量生産されるパネトーネの中には伝統的な製法を無視し、品質が低下したものも存在します。そのため、近年では伝統的な製法にこだわり、高品質なパネトーネを作る職人たちが再び脚光を浴びています。彼らは、自然酵母を使用したり、長時間発酵させたりするなど、手間を惜しまず、風味豊かでしっとりとした食感のパネトーネを作り上げています。パネトーネは単なる菓子パンではなく、伊太利亜の歴史と文化が凝縮された特別な存在なのです。