
桃の甘露、ネクターの魅力:日本初の果汁飲料物語
「ネクター」と聞けば、桃の甘美で濃厚な味わいを思い浮かべる方が多いでしょう。これは、乳製品で知られる森永乳業が、わが国で初めて販売した果汁飲料なのです。その名は、いにしえのギリシャ神話に登場する神々が口にしていたという滋養豊かな飲み物「ネクタル」に由来します。神々が味わうほどの美味なる飲み物、そのような願いが込められているのでしょう。当時は、果汁飲料はまだ珍しく、特に桃のように果汁を絞るのが難しい果物を飲料にするのは革新的な試みでした。森永乳業は独自の技術を駆使し、桃の果肉をあますところなく使用し、とろりとした口当たりのネクターを開発しました。このネクターの登場は、飲料業界に大きな影響を与え、果汁飲料という新たな分野を確立するきっかけとなりました。ネクターは、単なる飲み物ではなく、わが国の食文化における革新的な存在と言えるでしょう。発売当初からの製法を守りつつ、時代に合わせて改良を重ねてきたネクターは、今もなお愛されています。