
洋菓子作りの科学:ブレークダウン現象とは?
洋菓子作り、中でも油脂を多く含む滑らかなクリームを作る工程で、「分解」という状態に陥ることがあります。これは、主に小麦粉などの穀粉と牛乳や水などの液体を混ぜて加熱する際に、穀粉に含まれる澱粉が示す特有の変化を指します。具体的には、澱粉が水分を吸い込み膨らみ、加熱によって糊状になることで、クリームに粘り気とまとまりを与える役割を果たします。しかし、加熱を続けると、ある一定の温度を超えたあたりから、この糊状になった澱粉の一部が分解され、それまでしっかりと締まっていたクリームが急に柔らかくなるのです。この状態を理解することは、口当たりの良いクリームを作る上で非常に大切です。この分解は、単にクリームが柔らかくなるだけでなく、最終的な菓子の食感や風味にも影響を与えるため、菓子職人にとっては欠かせない知識と言えるでしょう。この状態を上手く制御することで、理想的なクリームを作り出すことができるのです。例えば、卵と牛乳を主体としたクリームを作る際には、この分解を意識的に起こさせることで、より滑らかで口溶けの良い状態を目指します。しかし、意図しない分解が起きてしまうと、クリームが分離したり、水っぽくなってしまうこともあるため、温度管理や加熱時間には細心の注意が必要です。